さよならピーチジョン
ピーチジョンの下着を全部捨てた。
ずっと、ピーチジョンの布面積の少ないパンツをスタイリッシュに履きこなすことを夢見てきた。
しかし私は股間の毛の量が大変多く、布面積の少ないパンツを履くと股間がもっこりして、さらには収まりきらなかった毛がはみ出てしまう。
あとは大胆に出ている腹肉も、長州小力を連想させる。
それでもいつか脱毛し、ダイエットすれば私もピーチジョンが似合う女になれると思っていた。
しかしある日、不要なものを整理しようと下着が入った籐の籠を目の前にして思った。
テディベアのような股間が医療脱毛で綺麗な更地になるまで、ピーチジョンの下着を眺めて過ごすのは時間の無駄ではないだろうか?
幼児期からポッコリと出た腹肉は自分のぐうたらなメンタリティではきっとなくならないだろう。
私はピーチジョンの下着の可愛らしいデザインを目に焼き付けながら捨てた。
KONMARIがものを捨てるときは感謝しましょうと言っていたので感謝しながら捨てた。
1、2回しか着用せず、観賞用になっていたものもあった。
悔しかったけど、もうピーチジョンは見るだけにする。買わない。という堅い決意があった。
ユニクロやウンナナクールの股間を十分に覆い隠してくれるパンツの方が安心するし、自分にはずっと似合っている気がする。
なによりラグジュアリーなレースのついたパンツのサイドからボサッと毛がはみ出ているようなかっこ悪い姿を着替えの度に見なくて済む。
あの姿はもはやピーチジョンへの冒涜だった。
私はずっとVIO脱毛をしたかった。
なぜならこれまで好きになった男性が強烈なパイパン至上主義の人が数名いたからだ。
「パイパンにしないと絶対に舐めない」とか「パイパンにしたら嫁にもらってやる」とかいう(今思えば)失礼な男もいた。
ちなみにその男には音信不通にされて付き合う前に振られた。
きっと運が悪かっただけなんだけど、パイパン至上主義男に出会っていくうちにどんどん自信がなくなっていった。
「毛深いから積極的になれない」「毛深いから愛されない」
恋愛がうまくいかないことを全て「毛深いから・・・」を理由にしていた。
金遣いが狂っている私にはVIO脱毛するお金がなかなか工面できず、どんどんネガティブに、自分の殻にこもるようになった。
1年間で4回連続失恋をするという経験をし、私は自棄になってバーやスナックなど、死んでもいかないと思っていた場所に1人で行くようになった。
いろんな人の話を聞くと、案外毛は重要ではないことがわかった。
股間がジャングルなことを全く気にしない人だっているし、「毛がたくさん生えてるのはチャーミング」だという男性もいた。
「パイパンにしたら嫁にもらってやる」という発言を私の代わりに怒ってくれる女性もいた。
今でも自分の股間は毛がボサボサでダサいな、と思うけど特段誰にも迷惑をかけてないし需要がないわけでもないらしいので、ユニクロとウンナナクールを着用して生きていこうと思う。
今まで夢をくれてありがとう、ピーチジョン。